30年ぶりに戻ったら (56) — 言ってみるもんだ
【あなたの考えるとおりに言ってみよう】
ジュネーブで20年以上お世話になったのが私の家庭医のマリオン先生。英語を話すお医者だからと、オーストラリア人の同様に紹介されたのがご縁の始まりだった。素晴らしい先生だった。
10月半ばのこと、マリオン先生のクリニックから、請求書が届いた。その日付は10月1日付けで。
え?私はもう日本にいるよ。
よく見ると、2月27日に診察したとある。引っ越し前の日付けだ。
なんだっけ?
アジェンダ(手帳)を見ると、この日私はチューリヒに出かけていてジュネーブにはいなかった。
納得できないので国際電話をかけた。先生のクリニックのメールを知らないし、知っていたところでアシスタントはフランス語の人だから、かえって面倒なのだ。
電話して訳がわかった。2月27日は私の頼んだ処方箋を郵送した日だという。その請求書を送り忘れていたので、今送ったのだという。
なるほど、そうか。
でも納得しきれなかった。相手のミスで今頃請求書が届いた。20フラン足らずの金額だった。私はそのために国際送金するのか?
そこで少々ごねてみた。
「理由はわかりました。けれども日本からこの金額を送金するのは大変な手間です」
「日本からはE-バンキングも使えません。」
「日本からスイスに送金すると、送金手数料が請求額の3倍ぐらいかかってしまう、、、、」
アシスタントの女性は「ああそうですか。ではこの請求書は紛失ということにしましょう」と言って、あっさり引き下がってくれた。
それでも私は念の為に彼女の名前を聞いておいた。こうしておけば、後からまた請求書が来たら、○○さんが言いました、と言えるではないか。
スイスは色々な点でルールがびしっと固い。けれど、このようにネゴ出来る場合もまたあるのも事実だと、懐かしく思いだした。
それは時と場合と相手によりけりで、いつでもこうなるというものではない。それでも、この場合のように言ってみる価値は時々ある。だから親は子どもに、「とにかくあなたの考えるとおりに言ってみなさい」と教育するのだ。
こういう小さな緩さは、社会を住みやすくするために結構大切じゃないかと思う。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント:自分から口をつぐまずに、まずあなたの考えるとおりに言ってみよう。
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