山の鉄道会社の国際化 (2)
外国語の業務訓練 — ユングフラウ鉄道
私の会った車掌さんたちは、どうやって日本語を身につけたのでしょう?グリンデルワルド地方には、中国、韓国からの観光客も大勢来ています。車掌さんたちは、その言葉も話すのでしょうか?
この点を、私の乗った列車を運行する、ユングフラウ鉄道の関係者に聞いてみました。
ユングフラウ鉄道は会社として言語訓練に取り組んでいます。
ユングフラウ鉄道の車掌たちは皆、母語がドイツ語ですが、その他に英語が必須、フランス語も重要とされています。これは、アルプスの名山や湖で有名な世界的観光地を走る鉄道ですからうなづけます。その他にも、スペイン語、イタリア語などのクラスを催しているそうですが、すべて任意参加で、授業料は無料です。
日本語は、今年の春、初めての試みとして開講されました。人事部訓練担当のムレマンさんのお話しでは、社員の関心の高さ、業務に必要な程度の日本語を話せるようになるまでにかかる時間などを知りたかったそうです。
蓋を開けてみると、社員の関心は高く、1時間半のコースを10回、2クラスに分かれ、合計20人が受講しました。
鉄道会社の外国語コースですから、業務にすぐに使える言葉を習得する必要があります。そこが一般の語学教育と違います。ムレマンさんは、インターラーケンに住む日本人の先生にお願いし、会社の人が先生と必要な内容を話し合って、ユングフラウ鉄道独自のカリキュラム、教科書を作ったそうです。
受講生の多くは、チケットカウンター担当者、車掌、運転士でした。チケットカウンター担当者と車掌は直接お客と話す人々ですから、日本語のな理由がわかります。でも、運転士がなぜ?
ムレマンさんにお聞きすると、乗車時間などの案内や緊急時の車内放送で日本語を使いたいという要望があるのだそうです。
なるほどね。
今回の好結果を得て、日本語講座を来年春にも再び開講するそうです。
他の言語、例えば、 中国、韓国、アラビア語のコースを開設する予定は今のところ無いそうです。車掌さんの中には、乗客から教わって、少し中国語などを話す人はいるでしょうけれども、とムレマンさんは推測されますが、実態はご存知ないとのことでした。
けれども、インターラーケン、グリンデルワルド地方にはそれらの言語を話す乗客は急増しており、今では日本人の数を凌ぐのではないかとさえ思えます。ユングフラウ鉄道に、ヨーロッパでない言語の講座が増えるのは、きっと時間の問題でしょう。
今回の旅で、日本語を話す車掌さんたちに出会い、国際化の一つの形を見た思いがしました。山の鉄道会社でも、国際化は必要な人々から地道に始まり、着実に拡がっています。