互いに影響し合い、学び合うーーにねんせい
【いつの間にか、学生同士で互いに学び合っていた】
「せんせい、つまらなーい!」
クラスで一番活発なFさんが声を上げた。
この寸劇には、さると警官が登場する。グループに分かれて、その名前、年齢、M/F、好きな食べ物、etc.を考えよう、というワークを始めたときのこと。
先生の質問の答えは、台本に書いてない、だから分からない!というわけだ。
「台本に書いてないからグループで話し合って想像するのよ」とわたしが言っても、学生にすれば、何をせよと言われているのか、手がかりもなく、そんなことできない!という気持ちだったんだろう。
先生のわたしは、ここで負けない。
だってこれは、学生たちが教科書を離陸して、言葉を心に近づけるチャンスではないか。
「面白いよー。教科書にないことを考えていいんだから」
その場は放置、同じ教室の他のグループの様子を見に行くと、そこでは違うことが起きていた。
Nさんの組は、「せんせい、もう話し合ったから、黒板にかいていいですか?」
Nさんのグループを皮切りに他の学生たちも次々に黒板に出て来て、自分たちの考えた、サルや警官の名前、etc.を書き始める。
いつの間にか、Fさんも黒板に出て来て、さるの好きな食べ物に頭をひねっている。
バナナ、と書くから、フォはどうなの?とヒントを与えた。8組中5組がバナナと答えていたからだ。「あ、ベトナムの食べ物でもいいんですね!」と喜ぶFさん。やんちゃな彼女にしてからが、「正解」という呪縛から離れられないのかなと思う。
こうして、8つのグループに分かれた学生たちが、黒板一杯に拡がったマトリックスのマスを埋めた。
壮観!全員同じ台本を読んで、皆違うことを想像している。
そして、人間て面白い。意志があるように見えても、こうして他の集団に引っ張られるんだ!
私が説明し尽くさなくても、学生たちは学生同士で互いに学び合い、サルと警官の人物像をそれぞれの心の中に育てて行った。
それはまだまだ不充分なんだけれども、泣いても笑っても、今学期はこれで終わりなのである。
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