30年ぶりに戻ったら (41) — 看護師と医者
【プロ同士だから平等です】
今日は母の付き添いで近くの病院に行った。それで思い出した、初めてパリで医者にかかったときの私の戸惑いと驚きを。
日本からパリに来たのが1989年。寒い季節で、私は日本から引き込んできた風邪をこじらせた。
自分一人で医者を捜すほどのフランス語を話せなかったので、パリで初めて知り合った日本人の友人のかかりつけのお医者を紹介して貰い、そこに行った。
予約してそのお医者,Dr. Mを訪ねると、そこは普通のアパルトマンだった。大きなアパートの大きな執務室に悠然とアンティークな机を置いて仕事していた彼女の姿を今も思い出す。
私はクスリを処方して貰い、注射を一本打つことになった。
Dr. Mのサインしたクスリと注射の処方箋を手に、私は呆然とした。わけがわからなかったのだ。
しどろもどろのフランス語で尋ねるに、どうも私はクスリは薬局に行き、注射は別の人のところに行かなければならないということのようだった。
え、どういうこと!?
日本だったら、医者がその場で注射を打ち、その医院で薬を出したのに。(当時の日本ではそういう仕組みだった)
そのとき初めて知った!ここは医薬分業、医師と看護師も分業しているのだ。
薬は薬局に行くとして、看護師もまた自分のオフィスを持っていた。彼女はフリーランスの看護師だったのだろう。
こうして私は、フランスでは医師と看護師は違う分野の専門家であり、対等の立場で仕事をしているらしいと学んだ。後年住んだスイスでも、医師と看護師は対等に見えた。
とまあこんな思い出話を、ある看護師さんに話したとき。彼女は目をまん丸くした!その表情から、日本ではどうもそうではないらしいと察しがついた。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント:ヨーロッパではプロ同士は対等だ。そこに身分の上下はない。そういう目で身近な周りを見なおそう。凄い人々があちこちにいることに気付くだろう。
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