30年ぶりに戻ったら (92) — 贈りものは心を一杯に込めて

【人々は贈りものを考え抜き、選び抜く】

夕方、小包が届いた。

今頃、なに?ーーと思って受け取ると、ダニエラからだった。

ああ、ダニエラは約束を守ってくれたんだ!

包みの中はオランジェット、砂糖漬けの細く切ったオレンジにチョコレートをまぶしたお菓子だ。ジュネーブには豊富な種類のチョコレートがあるが、その中でも私の大好物だった。

ダニエラは私と浅草で会うときにそれを宿においてきてしまった。彼女はいたく後悔し、どうしても郵送するという。

そんなこと、もういいのに。旅行中に誰かにモノを郵送するなんていうことは、かなり負担なものである。気持ちの上でも時間の上でも。ましてや、言葉の全く分からない日本で。嬉しかったけれど、私は固辞した。

それをダニエラは、なんとかして郵便局でゆうパックの封筒を買って私に送ってくれたのだ。消印を見ると京都中央となっている。こういう郵便局なら英語の分かる職員がいたかも知れないと思い、少しホッとする。

チョコレートのメゾンはSprüngli、チューリヒに本店のある老舗だ。高級チョコである。

ヨーロッパの友人たちがクリスマスや誕生日の贈りものをする場に私も居合わせたことが、何度かある。その度に友人たちが自分の予算は少なくても、質の良い、相手の喜ぶ物を贈るのを見て感心したものだった。

ヨーロッパには日本のようなお土産の習慣は無い。けれども、贈りものをするときは、人々は考え抜き選び抜く。そこに「あの人にはこのぐらいの値段でいいや」という妥協や値踏みが無いのだ。相手のために本気で心を込めて選び、贈る。

ダニエラは小さい子ども2人を連れて、日本への旅は大荷物だったろうに。そのトランクの中に、こんなにかさばるチョコレートの箱を更に入れて持って来てくれたのだ!

ありがとう、ダニエラ!

これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。

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学びのポイント:どんな小さな事にも心を込めよう。それは相手に伝わる。その気持ちがあなたの人生を変えていく。少しづつ、でも確実に。

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