30年ぶりに戻ったら (90) — ダニエラの転職
【自分で自分を小さくしない生き方】
今ヨーロッパはイースターのお休みのシーズンだ。
ジュネーブの友人、ダニエラもこの休みを利用して子ども2人を連れて日本に来た。
問わず語りに聞くと彼女は1年前に転職したという。中堅の弁護士事務所の経理担当として、良い仕事に就いたと私は思っていたが、実際の職場は余り人間的ではないと彼女は感じていたそうだ。
ダニエラはシングルマザーだから、子どもを育てるために絶対に働き続ける必要はある。その上、学校に行っている子供たちを抱えて仕事を探すのはキツかったという。それでも彼女は当時の職場で我慢するよりは、そこを出て別の仕事を探すことを選んだのだ。
いかにもヨーロッパの人らしい、とダニエラの話を聞きながら思った。そういう生き方を選ぶ人は多かった。辛いことからパッと離れていく潔さとも言えるし、こらえ性のレベルが低いとも言えよう。とにかく自分を小さくして、問題から目を逸らして、なんやかやと自分に言い訳しながら、生きることをしないのだ。
そうして今、子供たちと毎朝7時15分の列車に乗ってジュネーブの中央駅に出て、そこから小1時間かかる職場に通勤しているそうだ。毎朝大変でしょう、と言うと、仕事は定時に終わり6時には帰宅していられるからいいの、とまんざらでもなさそうだ。
ダニエラの場合、経理の専門家なのでどんな会社にも就職する可能性はあるという強みはあった。それを考慮しても思い切りが良い、と私の目に映る。
私は自分の失業を振り返る。理由はリストラでポストを削られた、つまり受動的な失職だった。色々な条件の巡り合わせで、毎日職場でとても辛い日々を過ごしたことは何度かある。それでも、ダニエラのように自分から会社を辞めて転職しようとは思わなかった。
これは私が辛抱強いからではなく、フランス語が母国語でないことと(地元の言葉を話せなければ仕事に就けない)、私の専門分野の求人はまず見つからないか、あっても非常に見つけにくいことによる。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。

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学びのポイント:あなたは自分を小さくしないで等身大で生きていますか?
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- 欧州生活30年の経験をもとに、講演、セミナー、執筆、取材を致します。テーマは国際ビジネスにひそむ見えない文化ギャップ、多文化共生、など。