30年ぶりに戻ったら (65) – ガスから電気に”翻訳”
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【「中火弱で約10分煮る」て、これ?!】
ヨーロッパにいる間中、料理の本は日本のものを使っていた。フランスの料理用語がわからないためもある。その上、水を使うキッチンで辞書を引き引き料理するのは結構面倒だ。
でも何よりの理由は、仕事を持つ私にとって30分以内で色々な種類の美味しい料理を作るには日本の家庭料理が一番だからだ。
日本のレシピを見ながらヨーロッパで料理していて気がついた。日本のレシピはガスの火を使うことを前提に書いてある。
ところが私の住んだパリやジュネーブのアパートでは、台所でガスを見かけることは希だった。無いわけではないけれど。
圧倒的に電熱の世界。電圧が高い、日本よりも電気料金が安い、等の理由のあるだろうが、ガスは危険だと言ってとにかく敬遠されていた。
そういう環境で日本の家庭料理を作っていると、ある種の”翻訳”がうまくなる。炒め物、揚げ物などの家庭料理を電気コンロで作るために、日本の料理本に書いてある火加減と時間を電気コンロ向けに翻訳するのだ。
例えば、炒め物をするために強火でシナ鍋を熱するなんていう場合は、相当の時間をかけてシナ鍋を温めなければならない。また、そのシナ鍋は底が平らなものでなければならない。
弱火、中火、強火の使い分けは電気ではできない。どうするかというと、二つの電気コンロを使って温度調節をする。
料理ができた後も工夫が必要だ。電気はスイッチを切った後も余熱が残る。これはガスではあり得ない。
どうするかというと、余熱を計算に入れてスイッチを切る時間を早める。余熱でもう一品作ることもある。
今、日本に来てガスの火で料理するようになり、その翻訳の習慣が自分の体内から抜けていないことに気がついた。😲
あっという間にフライパンが熱くなる。いけない!のんびり構えていた!
弱火のつもりでも、あっという間に煮物が沸騰する。
いやーーーガスの火ってせっかちなのね。
電熱には飼い慣らすまでに手こずったが、良いこともまたあった。じわーーと煮込む料理は電熱コンロがとても具合が良いのだ。500グラムぐらいの豚肉のかたまりを煮込んだり、また材料をじっくり蒸す料理には電熱がありがたかった。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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