30年ぶりに戻ったら (106) — 変わらぬもの
【その名はマクドナルド】
あるローカル線の駅前で、出勤前にホットケーキと熱々のコーヒーで朝食を摂ることが、水曜朝の私のささやかな楽しみになった。電車の本数の少ないその街にある小さな大学、どうせ行くなら早く行こうと思って時間の余裕をタップリとって家を出る役得である。
私はアメリカのパワフルな朝食が好きだ。特にホットケーキは好物。熱々のホットケーキにバターとシロップをタップリ掛ける。溶けていく、溶けていく、、!コーヒーが大きな紙コップ一杯に注がれるのも嬉しい。
パリのエスプレッソとクロワッサンの朝食も好きだったが、どうも私には物足りないのだ。
ホットケーキの朝食を摂るのはマクドナルド。ここは世界中でほぼ同じメニューを出している。
それで思い出した。
ヨーロッパの暮らしで不便だと思ったことの一つが、日曜日にお店が一斉に閉まってしまうこと。日本にいた頃、私にとって土日は食料品の買い出しをする貴重な日だった。だからかき入れ時のはずの日曜日に店を閉める、パリやジュネーブの習慣が理解出来なかった。
そんな土地でも、マクドナルドだけは開いていた。遊びに行ったロンドンで、ホテルでむやみに値の張る朝食にお金を使いたくないとき、日曜朝のオックスフォードストリートを歩いているとマクドナルドだけは開いているではないか!
おー、ここにバジェット旅行者の味方がいる!
水曜朝、駅前のその小さなマクドナルドでホットケーキにバターを塗る度にそんなことを思い出す。そうか、このホットケーキは世界にその名をどろかすオックスフォードストリートのそれと直行で繋がっているんだ!
それがなんとも可笑しく、どこか懐かしいのだ。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント:これはマクドナルドの味が好きかどうかとは別の話だ。変わらぬものには、変わらないなりの良さがある。
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