30年ぶりに戻ったら (184) — カーテンて大変だったのに!

【昔はキャラバン、今はワンクリック!】

パリで自分の好みで内装を整えた新居に入ったとき
エッフェル塔を見晴らすベランダの大きな掃き出し窓に
カーテンを付けようと思った。

わーい!

それは、フランスでカーテンを新調するとはどういうことか、
身を以て学ぶ長いプロセスの始まりだった。

まず現場の採寸作業から始まった。
カーテンレールの幅と、レールから床までの高さ
好みのドレープ(襞)を選択し、
そこで初めて
必要な生地の幅と長さの計算が始まる。

副産物があった。
これら一連のカーテンのノウハウをフランス人の同僚から教わったおかげで、
当時つたなかったわたしのフランス語は、急に上達した。
「窓幅の3.5倍の長さの布地が必要です」なんていうことをフランス語で言えるようになった。

パリ特有の高い天井!
そこにある窓に必要な布地は相当な分量になった。

いよいよ生地を買いに。
モンマルトルの丘の麓に、
生地の専門店が集まる地区があった。今もあるのだろうな、きっと。
そこは、幼い頃母の後に従いて行った、上野の赤札堂を彷彿とさせる場所で、
懐かしかった。

しかし懐古の情はここまで。
カーテン生地の買い出しは、1日がかりの力仕事だった。
カーテンの生地は洋服のそれとは比べものにならないほど重い。
その重い生地を大量に自宅まで運ばねばならない。
私の家は、モンマルトルからパリをダダーッと対角に横切ったブローニュにあった。
その当時小さなクルマを持っていたが、
大荷物をお店からクルマまで運ばねばならない。
わたしは旅行荷物を括り付ける折りたたみのキャリーを持っていき、
また、友達の秋代さんに荷物運びの手伝いを頼んだ。

気に入った生地を見つけて嬉しかったが、
総重量は20キロぐらいにもなっただろうか。
友人と二人、
重い荷を括り付けたキャリーを引き
モンマルトルの急坂、
それも石段を登る自分たちの姿を思うと、
それは重い荷をラクダに括り付け、
砂漠の道を行くキャラバン隊の心境がわかった。

布地を家に持ち帰ったら、
今度はそれを縫製して
フックを取り付け
カーテンにしなければならない。

誰にどうやって縫製を頼んだのだろう?
わたしはもう覚えていない。

カーテンを吊る日は、それでもやって来た。
淡いピンクに織り模様の浮き出たそのカーテンを
わたしはうっとり眺めた。

そして今、
何年使ったかも分からない、
ほころびの目立つようになった日本の自宅のカーテンを
エイヤと腹を括って新しくすることにした。

思わずパリの経験を思い出してゾッとしたが、
現代の日本は違った。
全てがウェブサイトでできるのだ!

これだけはリアルで
生地の見本を取り寄せたら、
カーテン専用のメジャーが付いてきた。
さすがは親切で気の利く日本のメーカー!

採寸し、
生地を決めたら、
あとはクリックを繰り返して
お金を払って注文する。

え、それだけ?

あんまりあっけなかった。

これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。

カーテン採寸用メジャー、先端の金属のフックをカーテンのランナーに引っかける。これは便利!

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学びのポイント: 怖いもの知らずだからこそできること、できたことは誰にもある。きょうはそのひとつを振り返って、学んだことを思い出してみよう。

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