30年ぶりに戻ったら (117) — 一人のディナーで行くレストランの選び方
【旅先で女ひとりで夕食をとるための知恵】
わたしは一人旅もまた好きだ。一人でぼおおっと車窓の景色を眺めるのは、わたしにとっては心の掃除だ。
一人旅で一つ苦手なのは、ご飯を食べる場所を探すこと。ランチはまだ良いとして、ヨーロッパや北米で女が夜一人でレストランに行くのは、気が重くてならなかった。これらの社会は、カップル単位で行動する習慣がある。東京で良く見るように、女性同士、男性同士が夜食事に行くことはまずない。あっても少ない。
まわりはパートナーと一緒にいる人ばかりの中、女一人でディナーのテーブルにつくのは、手持ち無沙汰でならなかった。また、一人客の、しかもアジア人の女性は物欲しげに見らるかもしれないではないか。
経験を積んで、わたしは知恵を身につけた。
中華料理店を探すべし。それも高級店はNG。庶民の行く感じの店が良い。中華料理店ではさほどカップル社会ではない。
開店直後の時間、例えばパリだったら6時頃に店に入る。まだお客は少ないし、好きな席を選べる。店の人も余裕綽々で親切だ。
テーブルに白いクロスのかかっていないレストランに行く。こういう店はわりとカジュアルで、一人で夕食を摂りに来る人は男女を問わず珍しくない。
一人でも、ディナーらしい雰囲気のあるところに行きたかったら、レストランではなく、ブラッスリーという看板を上げている店に行く。こういう店は、テーブルに白いクロスが掛かっていても、品の良いカジュアルな空気があり、女一人でもそうそういやな思いはしないものだ。
こんなことをふっと思い出したのは、今日の一人ランチで久しぶりにブラッスリーに入り、パリの経験を思い出したから。
場所は上野駅構内、元は貴賓室だったという。テーブルや椅子の使い方、黒服のギャルソンさんたちがキビキビとサービスに動いている様子、パンは一回一回バゲットを切って出してくれるところなどが、わたしの思うパリ風だった。全体的に品が良くカジュアルなところが、パリのリヨン駅構内にあるブラッスリー、Le Train Bleu (青い列車)を思い出させて、ちょっと懐かしかった。ここも駅だし。
さすがは世界の大都市東京、こんな場所もあるんだね。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。

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学びのポイント: その社会のアタリマエをやらないところで知恵と気づきは生まれる。
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