30年ぶりに戻ったら (46) — 税務署への暑く長い道
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【30年ぶりに戻ると 46】
税務署への暑く長い道
スイスに暮らしていて、この国の人々は「○○はせねばならぬことなんだからちゃんとやるべきだ」と思っているのではないかと感じることがよくあった。
例えば原子力発電所。スイスの電力の約70%は原発で生産されている。この割合は日本よりも高い。それが福島原発の事故を契機に将来のエネルギー源を考え直す気運が高まった。そして、今ある原発は寿命まで使用するが、その後はもう新設しないと決めたのである。
原発に変わるエネルギー源はまだ無い。太陽やら風力やらを使った発電技術を開発中である。
それでも原発をもう止め、と決めてしまった。それは止めなければならないものだから。
見上げたものではないか、この精神!
先日、用があってF氏を管轄する税務署に行ったとき、そういうスイス魂が思い出されてならなかった。
F税務署は電車の駅から歩いて15分。近くにバス停はない。
それは大変な道だった。まず私には歩いて行くにはちょっと骨の折れる距離だった。時に気温33度の夏には。道中半分の距離に歩道と車道の区別が無い。しかもその部分はクルマの行き交う県道だった。人とクルマが同じ平面上を行く。危険である。
それで、ついスイスのことを考えてしまった。
スイスならこんなことはまずないだろう。税務署や、病院、学校など公共施設の前には、必ずバスやトラムなど公共交通の停留所がある。
日本の名誉のために断っておくが、日本でも大抵の場合は、公共施設のそばにはバス停がある。
しかしスイスとの違いは、それが徹底している程度の差なのだ。スイスの場合は、ほぼ例外がない。だからF税務署のようなケースは考えられない。
そういうスイス魂を堅苦しい、融通が利かないと感じることもあった。
しかし8月の炎天下、汗と排気ガスにまみれてF税務署まで歩いたときは、あの頑なさの有り難みがわかった。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント: すべきことはする、それを貫けばこれはこれでりっぱな行き方なのだ。
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