30年ぶりに戻ったら (50) — 傘は日本文化だ
【あなたは傘立ての美に気がついていますか?】
傘は日本文化だ
日本の傘は世界一と思う。美しくて、丈夫で値段が手頃だ。随分色々な国に住んだり旅行したりしてきたが、こんなに傘の種類の豊かな国はない。
そして傘にまつわる作法と小物もまた日本独特。
先日、何十年ぶりに訪れた上野の都立美術館。入り口で建物と同じぐらい美しい傘立てを見て感動した(写真)。この現代美術館建築の粋を集めたような施設にさえ、というか、だからこそ、こんな見事な傘立てがある!パリのルーブルやオルセー美術館にこんな景色はなかった。
傘を持ってきた人は、個々に傘を預け、カギを手にして建物に入る。そのカギの作りは簡単で、きっと壊すのも簡単に違いない。なのに、カギを壊してここに置かれた美しい傘を盗む人がいないのだ、この国には!だから傘立てというものが存在できる。つくづく安全な国だと思う、日本は。
そして傘袋ーーこれは日本にしかない製品ではないか?
デパートの傘売り場で数々の傘袋を初めて見たとき、その美しさとつくりに感心したものの、誰がお金を出してわざわざ傘袋を買うのか、首をかしげた。
傘袋は長い傘(折りたたみ傘ではなく)のためにある。長い傘を持って歩くときは家を出る時から降っているときだ。いつ傘袋を使うんだろう?
先日朝から雨の降った日に長い傘を持って出て、傘袋の必要なわけがわかった。
日本は、というより、東京はという方がいいと思うが、電車に乗る時間が長い。そのうえ電車がいつも混んでいる。たとえ昼下がりの、ジュネーブならトラムががらがらに空く時間でさえ、あの長い総武線の電車のどの車両の座席も埋まっている。
混んだ電車に長時間濡れた傘を持って乗るとき、傘袋は重宝だろう。傘を傘袋にしまえば隣の人の衣服やバックを濡らさないよう気遣わなくてもいい。
こんな発想、ヨーロッパにはなかった。雨の多いというロンドンだって、こんな素敵な傘文化は見かけなかった。
何でも器用に美しく作る日本人が高温多湿な夏を何世紀にも亘って過ごして来たとき、こんな傘文化が育ってきたんだろうな。
皆さん、日本に来た外国のお友達には傘をお土産に勧めてあげるといいですよ。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント:あなたがアタリマエと思って気づきもしないコトの中にあなたの持つものの価値があるかも知れない。
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