30年ぶりに戻ったら (183) — 医院の入り口で靴を脱ぐ?
【そうだった、ここは日本だった。】
先日近所の歯科医院に行ったときのこと。
わたしは入り口のドアを開けて、
何も考えずにそのままツカツカ受付に進もうとした。
ととっ!
そこには三和土があって(たたき、と読む。こんな言葉は現代日本人はもう使わないだろう)、
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるようになっている。
そうだった、ここは日本だった。
すっかり忘れていた。
医院では靴を脱いで上がるのか。
ここが住宅地にある、
先代の先生の時分から開業している医院だったからかも知れない。
それでも、この医院も息子さんたちが家業を引き継いだときなど、
何度か改装しているんだけれど、
入り口で靴を脱ぐ作りは変えなかったんだな、と
わたしは妙に感心する。
日本て面白い!
思いがけないところで、昔ながらの習慣が顔を出す。
ヨーロッパの医院で先ず驚いたのは、
そこが医院に見えないこと。
普通の、つまり人が住むように造られたアパルトマンを改装しているだけなのだ。
初めてパリでかかったお医者はモレ先生だった。
パリの古い建物の特徴である、天井の高い一室、
マントルピースを前にして座る彼女のデスクは
わたしの目にはルイ十何世風のアンチークのように映った。
医者の執務室には到底見えなかった。
まるでどこかのお城の一室で診察されているような、
妙な気分だった。
靴など脱ぐわけがない、
診察台に上がる場合の他は。
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。
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学びのポイント:習慣は体が覚えている。今日はあなたのそういう習慣を一つ、見つけてみよう。
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