30年ぶりに戻ったら (147) — 行列もその国なりに
【例えわたしの目にはそれが行列と映らなくても】
日本の人々はよく並ぶなあ、と思う。
いや、ここは並ぶべき場所だと誰もが何となく思っている、その場所の管理者が人を並ばせたいと思っている、そんな場所が多いという方が正しいのかな?
この写真をご覧あれ。この指示書きを最初に読んだとき、わたしには意味が分からなかった。何度かこのバス停を利用して、その度に読んだがやはりわからなかった。
ある日その指示の意味が分かった。
読んで分かったのではない。そこに行列してバスを待つ人々を見てわかったのだ。この文章を理解してその通り並ぶほど、日本の人々は行列をよく理解しているのだと感心した。
そう思うとき、わたしの常識は日本のそれとは離れてしまったと気がつく。
というのも、わたしはこんな”試練”ともいうべき経験を世界のあちこちで経てきたのだ。
数年前、インドはボンベイの空港で。チェックインカウンターに長蛇の列ができている。わたしは自分の乗るフライトの列の後尾につこうとしたが、列が交錯し合っていて(と私の目には映り)どこがわたしの並ぶべき列の後尾か分からない。
いや、その前提となる、「ここにはわたしの並ぶべき列があるはずだ」という事そのものがわたしの思い込みだったのだ。
とにかくわたしは自分がここだ!と思う場所に並び、列が進むごとに少しづつ依り確立の高そうな列にゴニョゴニョと移っていった。
行列で苦労したことならまだある。
まだわたしが日本にいた相当前のこと、カイロに一人で旅行した。昼食時になり、お腹が空いたので外国人観光客(わたしもその一人)の行くレストランに行ってみると入り口に人が溢れている。よく観察すると行列らしきものがある。
仕方ない、そこに並んで待ていると、入り口近くまで来たときにわたしの後ろにいたイタリア語を話すオジサンがわたしをぐいぐい押してくる。彼はわたしを列の外に出そうとしているのだ。わたしは負けじと頑張ったが、そのオジサンのしつこいぐいぐい攻撃に遂に負けた。彼は私一人の場所に、自分とその家族全員を入れてしまった。
行列のできない西洋人がいるんだ!その時には驚いたが、後にヨーロッパで何度か痛い経験をして、それはわたしのこういう思い込みがあったためだと気がついた;
「文明の民はキチンと行列を作るものだ」
これはどちらが良い悪いという話ではありません。世界はこんなもんだということで。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
学びのポイント:外国に行ったら、あなたの行列に対する常識は脇に置こう。そしてその国なりのあり方を楽しもう。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
- おなじテーマの人気記事はこちらです→
- 欧州生活30年の経験をもとに、講演、セミナー、執筆、取材を致します。テーマは国際ビジネスにひそむ見えない文化ギャップ、多文化共生、など。