最初の国際交渉 2 — 国際交渉の現場から (8)

前回述べたように、私にとって最初の国際業務は、1985年、国際電気通信連合(International Telecommunications Union,ITU)の標準化会合への出席でした私の担当したのは、現在の組織で言うITU-T、当時の名称CCITT(Comité Consultatif International Téléphonique et Télégraphique)、に属する標準化項目でした( http://en.wikipedia.org/wiki/ITU-T)。CCITTには13のStudy Group (SG)がありましたが、私は利用者に関連の深い課題を扱うSG2を担当しました。

“E116勧告、クレジットカード通話手順”は、私が勧告作成に参加した最初の課題です。KDD(当時)の谷正喜(たに まさき)さんが、ラポーター(課題検討グループの議長はこう呼ばれました)を務めておられました。谷さんからも、多くを学びましたが、それは後述します。

E116勧告の目的は、発信者がクレジット通話サービス(通話料金を発信者でも、受信者でもない、第三者に課金する通話サービス)を利用する際の、手順の標準化でした。ここでいう手順は、通話者(人)の手順を指します。

私は、全くの素人だったので、課題検討グループに参加するかたわら、クレジット通話の技術、課金方法などテクニカルな事項をせっせと勉強しました。そのために、NTTの通信研究所にいた同僚に資料を送って頂きました。ところが、私は業務系の人間なので、技術には明るくありません。研究所の作成する書類を読み解くのは骨が折れました。それでも門外漢ながらも、クレジット通話サービスには多くの決まり事があって初めて成り立っていることだけは、わかりました。

また、どんなサービスにも専門分野があること、特定サービスの専門家ではない私が、標準化会議に出席して、どのような役割を果たせば、会議全体にも、また私を送り出したNTTにも役立つのだろうか、という問題意識を持ち始めたのも、クレジット通話サービス標準化にガップリと取り組んだおかげでした。

クレジット通話サービスは、当時は「クレジットカード電話 」と簡略に呼ばれることもよくありました。買い物に使う、VISAカードのようなクレジットカードを使って支払いのできる通話、と誤解されたことは頻繁でした。私は、これだけはにわか勉強をしたおかげで、このサービスの要は、カード自体ではなく、クレジット通話サービスを利用するための番号だということに気がつきましたが、その当時は、電話とクレジットカードを結びつけるかのような呼称が新鮮に思われて、こんな誤解を生んだのかも知れません。

この記事は、NPO国際人材創出支援センター(ICB) ウェブサイトに連載されています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です